はじめに

              ガーデンルネッサンス                            

                                    辻 本 智 子

 私たち人間がこの奇跡の星に生まれ、食料としての植物を手にしたときから緑と人間のかかわりが生まれた。環境により形が異なることがあっても元来、庭は人間にとっての理想郷であった。大切な食料を保管する庭、美しい花を集める庭、神の世界へ近づくための庭、華麗な交流スペースとしてのサロンの庭、市民の健康、都市の環境を守る公共の庭園―<公園>。私達の文明の変化とともに庭の役割は多様化してきた。 

  江戸時代に日本を訪れたヨーロッパの人々が驚いたように、私達の先人は、世界に誇れる高い庭園文化を築き上げてきた。そして庭園文化は高い身分の人だけでなく、庶民の間にも広がって、身近な生活空間に花緑をセンスよく配置していた。 産業革命以降、西洋では工業化という自然を破壊することで経済発展を導いてきた。海外に追いつけ、追い越せと明治以降日本も同様の道を歩んできた。その結果、世界中で都市への人口の集中、都市の拡大そして自然豊かな発展途上国の森の破壊まで行うようになった。その結果私達の地球環境は急速に悪化してきた。

 今、私達はもう一度、自然と共に生きるライフスタイルを構築することが必要になってきている。21世紀、地球環境を無視してはこの地球の存続はありえないことを私達は気づかずにはいられない状況にある。

  そこで、私達はもっとも身近な緑、庭園=ガーデンを通し、先人が築いてきた共生の文化を学び、ライフスタイルへの転換、循環型社会の構築を図る試みが必要である。

  「水惑星地球のガーデンルネッサンス」とは、先人が創り上げた庭園文化や伝統的ライフスタイル等を見直すとともに、21世紀の地球環境を意識し、自然と共生する地球レベル、世界レベルでの新たなまちづくりを個人の「庭」で代表される「花・緑」で提案するものである。「水惑星地球のガーデンルネッサンス」とは身近なガーデンを通し、住民1人1人が地域環境に責任を持ち、自らの力で創り育て上げる参加型社会づくり運動である。そのためには下記のような整備が求められる。

1 野生をよみがえす五感に訴える緑空間作り 宇宙のリズム、地球の自然の巧妙さ(科学性)、美しさを読み取る人間の動物としての野生の五感を磨くスペースとしてを花・緑空間の創造する。

2 市民から始まる伝統工芸、文化、ライフスタイルを継承する21世紀型地域景観づくり、ガーデンづくり 地域の伝統工芸文化・ライフスタイルは自然とのかかわりから生まれたものである。このことを十分研究学習し、市民が主体に伝統工芸、地域文化を生かした21世紀型の景観づくりやガーデンづくりを行いながら、自然と人間が生み出した地域コンテクストを継承する。

3 多分野参加型の循環型社会構築のためのシステムづくりと交流拠点 環境循環型社会を構築するためには建築・環境調節という関連分野だけでなく、あらゆる分野とのコラボレーションが必要に必要になってくる。そのためには環境を社会の中心において、経済や文化の展開を図るシステムづくりが必要である。 多分野のコラボレーションをはかり、緑空間づくりを試み、それが、新たな花、緑、環境産業の展開を生む事を見せることで、様々な分野と環境が強く関わっていることが解りやすくなる。様々な分野が交流できる場、コラボレーションで実験的に空間作りが可能な場が循環型システムづくりに必要となる。このような場としては適切な、自然系ミュージアム、特に植物園や公園の新たな利用のあり方が検討される必要がある。

4 住民参加の共生のまちづくりシステム構築の場としての花緑施設 循環型社会の構築には市民一人一人に自然との共生を意識したライフスタイルが求められる。住民が身近なところから、地球環境レベルまで知識と判断力をもつためには、植物園で代表される花緑施設で花緑空間を体験するだけでなく、たとえばガーデニング指導にも循環型社会への理解を深める情報やまちづくり情報が提供される必要がある。

 

 

 

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